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1月20日の理事会終了間際になって、2人は、「電話問題に限ってC社側弁護士と協議したい」と発言したといわれている。
だが、「電話問題」というのは、いかにも不自然である。
破産管財人がN八王子営業所と連絡をとり、1月26日に関係者を集めて協議の場を持つように設定したのは、その前日である。
電話問題は、解決の途を探る手だてができていたのである。
らなかった。
電話問題など一つの突破口に過ぎないのは一週間後の理事会で明らかになった。
「電話問題に限定せず、より広い範囲での「話し合い」が必要である」と再提案してきたからだ。
「話し合い」の対象をC社の代表であるSではなく、同社従業員としている。
それがカモフラージュであるのはいうまでもない。
A棟顧問弁護士が路線変更を、いつ、どうして決めたのかは判らない。
だが、実は3棟協議会の設立を決めた「共同管理に関する協定」に調印する時点で、すでに予兆はあった。
協定の調印は1月9日。
文案は一百前の7日に合意されていた。
9日当日の調印はセレモニーに過ぎず、調印後に検討される予定でいた電話問題の解決案の方がむしろ重要課題であった。
当日になって、同席していた一人の弁護士が突然、調印に反対する。
長時間の議論の末、A棟代表が別室で協議するという事態まで起きた。
弁護士は「調印するならA棟代理人を辞任する」とまで言い切ったという。
このときは、別室で協議した2人の副理事長ら4人のA棟代表が、弁護士の反対を押し切ってでも調印すると決断して、事なきを得た。
一週間後、雲行きが変わる。
3棟協議会の発足後、3棟間では1月32日に協議会旗揚げの「大集会」開催で合意していたのを、A棟管理組合理事会が中止を決定してしまう。
もちろん理事会の中には、不自然な動きと見る目はあった。
組合に設けられたマンション部会は反発し、部会独自でマンション相談会を開催。
引き続いて決行きれたのが、前節で述べたA、C棟合計6一人の参加をみた現地視察である。
現地視察の場面でも不審な動きがあった。
終了間際になってC社の従業員が「話を聞いて欲しい」と申し入れてきた。
これにA棟参加者の一部、ホテル部会の役員らが応じた。
弁護士の「話し合い」提案は1月20日の理事会であるから、すでにそれ以前に関係者の間で謀議が重ねられていたと考えて差し支えなかろう。
MはC棟協議会の代表ではあっても、3棟協議会路線を進める上ではA棟管理組合の動向に無関心ではいられない。
Mは、こうした謀議は前年の2月にすでに始まっていた。
「2月半ば、A棟の顧問弁護士の事務所で、A棟のリーダー格の理事の一人がホテル運営について何者かと密談したという情報があった。
密談の相手は不詳だが、そこで「ホテルァーサー札幌」方式が提案されたらしい。
それからA棟管理組合内部に新しい流れが生まれたよう「ホテルアーサー札幌」のホテル運営方式についての説明は割愛する。
問題は、密談の内容が「ホテル運営」に関してという点だ。
ホテルオーナーとマンションオーナーの分断はK社の常套戦術である。
新しく作るホテル運営会社にホテル部会の理事が役員に入ることなど、具体的なホテル運営方式を提案したのは、確かに新しい展開といえた。
92年末にかけて行われた93年2月からの入居者募集の準備の過程では、それに合わせるような動きもあった。
A棟管理組合は当初、鍵の取り替えやリフォームなどの業務に関しフレンドパーク社を代理人とする委任状の提出を個々のオーナーに求めていた。
それが一週間ほどで代理人をA棟管理組合に変更するように改めて通知している。
当時、怪文書攻撃にさらされていたF社の代表取締役でもあったMに対するオーナーたちの不安を避けるためというのが理由であった。
穿った見方をすれば、委任状を受けたA棟管理組合が、H社とは別の業者に業務を委託する地ならしと受け取れなくもない。
今でこそこう分析するMも、A棟の動きが後に大騒動に発展するとは当時は読み切れていなかった。
Mだけではない。
Rの詐欺的商法を見破り、当時はC棟協議会の顧問で、C棟訴訟代理人となっていた弁護士のTにしても、同じである。
「協定調印時も含めてF社について抵抗しているのはよく判った。
まあ、新しい管理会社を引き入れて役員に就任するなどして利権にありつこうとしているな、という程度に見ていた。
まさか、直接C社と結びついて、そちらに管理を委託するような方向に向かうとまでは……」A棟管理組合顧問弁護士の「話し合と提案は、それほど衝撃的な出来事だった。
「話し合い」は1月30日を第一回目とし、それ以降、提案した弁護士2人のリードのもとに回を重ねていく。
それにつれて、「話し合い」の本質も露わになってくる。
第一回目の「話し合い」でC社従業員は、なんとC社代表取締役、つまりSをオーナー会代表にするなどの提案を出している。
さすがにこれにはあきれ果てた。
対するA棟管理組合側は、経理の公開やSの退任を要求したものの、どうやらそれは軽くいなされたようだ。
それどころか、とんでもない提案を突きつけられ、しかも応じようとさえしていた。
3月2日に行われた「話し合い」でC社側弁護士が、一時的な休戦協定の締結、さらに管理組合側弁護士とC社側弁護士との共同口座を設け、管理費をその口座に振り込むという提案を持ち出したのだ。
共同口座の開設がどういう意味を持つか。
弁護士が理解できないはずはない。
すでにA棟管理組合はC社を相手に部屋の明け渡し裁判も提起している。
原告と被告の間柄だ。
それが共同口座を設けたとなると、「和解」の成立と見るのが普通ではないか。
ひいてはそれは、C社の不法占拠を不法でなく正当と認める状況にもつながりかねない。
実際に、A棟管理組合顧問弁護士は「和解」の方向に誘導しようとしていたのである。
共同口座設定の提案を受ける前日の3月1日に開かれた明け渡し裁判の第3回口頭弁論では、「和解」に切り替えた。
それまで「話し合い」を「和解のためではなどとしていた弁護士が一転して、「裁判上の和解であるから強制執行力がある。
不利な和解にはならなどと、公然と「和解」の言葉を口にするようになった。
そしてついには、C社が究極の狙いとする提案を持ち出してきた。
「顧客が安心して居住・利用できる環境を創り出すため」に「一致協力して、早期にカレッジタゥン八王子の再建を目指していく」ことを目的に「協定」を結び、それに基づいて管理・運営に関する「覚書」を交わそう、というのだ。
「協定」と「覚書」の文案を渡されたA棟管理組合理事会は、検討を始めた。
「覚書」は実質的に「管理運営委託」契約を結ぶのに等しいA棟管理組合理事会の中にも、こうした流れに反対する意見がなかったわけではない。
だが、反対意見を述べる理事は排除されたり、洗脳されたりしていく。
この頃には、強硬な反対勢力はわずか数名に減っていた。
この間の状況について、3棟協議会を構成するB、C棟にはもとより破産管財人にも一切、破産管財人は3棟協議会に参加を表明した1月18日時点で、「C社に対する共有部分の明け渡しの共同提訴」を提案している。
むろんこれにも応えなかった。
結局、破産管財人は3月8日、C社を支配するSの本拠、S通商宛に「否認権行使通知書」を送付した。
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